【長崎・橘湾岸スーパーマラニック273㎞(W部門)を制覇】金龍への道のり!

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2023年11月3~5日で橘湾岸スーパーマラニックW部門に挑みました。

これまで過去に3回のリタイヤを経験し、4回目のチャレンジでついにゴールに辿り着くことができました。過去の悔しい経験があったからこそ、今回のゴールは本当にうれしかったです。

今回は1日目の序盤からベテランランナーと一緒に走り、コースの攻略について色々アドバイスを受けました。結果的にこのアドバスが3日目の走りを支え、ゴールまで導いてくれたといっても過言ではありません。

この記事ではW部門のコースの紹介と今回のレースを振り返り、攻略の決め手となった作戦をお伝えします。

大会の概要

マラニックとはマラソンとピクニックを掛け合わせた造語です。順位やタイムを重視せず自分のペースで走ります。途中景色を楽しんだり食事を取ったりしながらゴールを目指すのが特徴です。

そして今回参加した橘湾岸スーパーマラニックは長崎県の橘湾岸がコースとして設定されています。高低差は激しく、簡単ではないですが、すばらしい景色が堪能できる大会となっています。

本大会は春(5月)と秋(11月)に2回開催されています。春には55㎞、80㎞、173㎞、217㎞の4コース、秋には島原半島の絶景を堪能できる100㎞のコースが設定されています。

そして春と秋のコースを一気に走破するW部門(273㎞)と究極のH部門(320㎞)が設定されています(W、H部門は参加資格あり)。

今回は私が参加したW部門、273㎞のコースを振り返ります。

大会のスケジュール

W部門は3日間かけて行われます。

スタートはランナーの実力により事務局から指定されます。

過去に2回以上のリタイヤがあり、完走経験のない私は11月3日の午前7:00スタート。

他に実力に合わせて10:00、13:00、16:00スタートのランナーがいます。16:00なんて私の9時間後にスタートです。世の中にはすごい人がいるものです。

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↑スタート地点・受付会場

制限時間

ゴールの小浜南本公民館の制限時間は11月5日の17:00です。

 7:00スタートだと 58時間 →私はこれになります。

 10:00スタートだと 55時間

 13:00スタートだと 52時間

 16:00スタートだと 49時間 となります。

1日目と2日目はそれぞれシャワーや仮眠をとることができます。

そしてこの2つのポイントはある程度ランナーのバラツキを抑えるためにリスタートの時間が設けられています。つまり早く付きすぎても一旦止められるわけです。

このポイントに何時ごろつき、どれだけ休憩するかは1つの作戦になります。

早くついて休憩時間を多くとるか、ペースを落としてゆっくり進み脚を温存させるか。色々な考え方があります。

コース紹介

コースを文字で説明するのはかなり難しいのでまずはコースマップをご覧ください。

赤いところがコースです。

龍ががうねっているように見えませんか? これが「金龍うねる路」と言われる所以です。

そして高低図がこちら↓

獲得標高は5700m以上あると言われています。日本の超ウルトラのコースでは山岳コースを除くロードの大会では日本一であると言われています。

そして、レース中は運営事務局から送られてくるハンドブック(地図)を持って走ります。

コースは大まか頭に入ってますし、周りの選手がいるので道を間違うことはほとんどありません。しかしコースが長すぎるので自分の位置を確認したり、(気休めですが)どのくらい進んだかを見るために3日間握りっぱなしで走りました。

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↑3日間握りしめてクシャクシャになったハンドブック

完走のための攻略のポイント

完走を阻むもの

長時間のレースなので、リタイヤの原因として足の疲労は大きな要因の一つになります。

それ以外で完走を阻む原因を挙げてみました。

  1. 眠気
  2. 寒さ
  3. 内蔵へのダメージ
  4. 足底のダメージ
  5. マメトラブル

これは私が過去3回リタイヤした際の主な原因になったものです。

特に「眠気」と「寒さ」は小浜中継所(173㎞)以降のとても長い暗闇の海岸線で一気に襲ってきます。

眠い→ちょっと休む→寒くなる→動けなくなる→リタイヤ

という流れを過去に何度も味わってきました。

参加者の中には、コース途中のバス停で少し仮眠し再スタートする方もいますが、この方達はまだ体力に余裕があるのだと思います。本当に体力ギリギリの人は少し眠るともうレースに復帰することはできません。そのまま力尽きてしまいます。少なくとも私はそうでした。だから体力を温存ということはすごく大事なのだと思います。

内臓のダメージも深刻です。3度目のリタイヤとなった2018年は特にこれに悩まされました。2日目以降ほとんど食べることができず、食べても戻すの繰り返しでした。ついには200㎞超えた原城跡で胃の痛みで気力が尽きてリタイヤしました。

具体的な完走のための戦略

今回取った作戦は1つ!

「無理して走らず、歩き(早歩き)を多く取り入れるです!!

まずペースを確認ですが。

私は11/3の7時スタートなので時速6~6.5㎞のペースを維持すれば11/4の午前1~2時には115㎞の茂木長崎ハウスぶらぶらにつきます。この時間につけばリスタートまで少なくとも2時間ぐらいは仮眠できます。

1時間に6~6.5㎞ということは歩くより少し速いペースです。時間の配分を考えると全てを走らなくても十分に目標に到達できるペースです。

歩きを取り入れることの効果(内蔵と脚のダメージを減らす)

歩きを多く取り入れることにより、内臓のダメージを減らすことができます。

内臓のダメージは長い時間、胃が上下に揺られることで出てきます。それをなるべく遅らせるために、走る時間を減らし、上下移動の少ない歩き(早歩き)で進んでいきます。

登りはもちろん急な下りも歩きました。下りはスピードがでるので、調子に乗ってスピードを上げがちですが、衝撃が大きい分内臓の揺れも大きいです今回は1日目の難所、権現山や樺島灯台も下りも含めほぼ歩いて通過しました。

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写真:権現山からみた樺島

70㎞付近。権現山を登る途中で樺島と樺島大橋(左奥の赤い橋)が見えます。日が暮れかけてきました。まだまだ先は長いですが、余力はあります。前回はこの辺りで吐き気が出てきましたが、まだ大丈夫です。内臓へのダメージが少ないことを実感してます。

歩きを多く取り入れることで脚へのダメージも減らすことができます。例え”すり足”でゆっくり走ったとしても、足底からの衝撃は蓄積されます。早歩きの方が衝撃が少なく脚を温存することにつながります。序盤ではわからないかもしれませんが、この積み重ねが後半でも走れるかどうかに関わってきます。

作戦は「無理して走らず、早歩きを多く取り入れる」これ1択です!

ベテランランナーの存在

実はこの戦略は1日目をご一緒したベテランランナーさんからのアドバイスでした。この方はは過去に2度もW部門を制覇していて、私より確実に格上です。25㎞から一緒になり、その後98㎞の川原エイドまで70㎞以上を一緒に進みました。これまでこんなに長く他のランナーとご一緒したことはありません。おかげで色々な情報やアドバイスを受けることができました。

その一つが「時間を有効に使うこと」です。

早く中継地点までついても、リスタートのために止められます。それならじっくり時間を使って脚や内臓へのダメージを少なく、後半への余力を温存させながら進んだ方がいいという内容でした。

確かに。。。

これまでリタイヤした過去3回はどちらかというと中継地点までなるべく早く辿り着き、沢山休憩をとるような考え方だったので、実に真逆の視点でした。

実をいうと、このアドバイスを聞くまでは今回もリタイヤした前回と同じようなプランを考えていました。しかし、3回失敗しているのに同じことをやっても失敗する確率が高いと考え、我流ではなく実力のある人の真似をしてみることにしたのです。

この方とは98㎞地点まで並走し、この後はそれぞれのプランがあったので、一旦ここで別れました。

その後のレース展開

この作戦の甲斐もあって、115㎞の茂木には午前2時前に到着。予定通りです。しかも、過去レースの同じ時点の状態よりも脚や内蔵に余裕がありました。

ここでは2時間ほど仮眠をとり、午前5時前にリスタートしました。

手ごたえを感じた2日目も同じ早歩き多めの作戦で進みました。日が昇ってくると強い日差しが照りつけます。午前中までに高低差のある難所を通過したい気持ちが強まります。しかし早歩き多めという作戦通りペースを維持し、飯盛峠を8時半頃、ジャガイモ畑を10時前に通過しました。一安心したのも束の間、千々岩の海水浴場付近はアスファルトで日差しの照り返しが強く、2日目で一番体力を削られました。そして頑張った甲斐もあり、173㎞の小浜中継所には11/4の14:30頃、なんとW部門トップで到着することができました。

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↑大会名物ジャガイモ畑。永遠と登りが続きます。

11/4のリスタートは20:00です。準備やシャワーの時間を多めにとっても4時間ほど仮眠できる計算でした。一旦眠りにつくも、全身の身体の痛み(特に脚)で2時間ほどしか眠ることができませんでした。それでも後半戦へ体力を回復させるため、覚醒していましたが、目をつむり横になって残りの2時間を過ごしました。

いよいよリスタート。いくら温存したといっても、流石に身体は疲れています。前半は島原半島を半周ぐるりとまわるコース。夜間だし、長い海岸線の単調な道に眠気と疲労が溜まってきます。前回リタイヤした200㎞地点の原城跡地を通過。まだまだ動けます。しかし、あと70㎞以上あります。身体を奮い立たせ再びスタートします。

223.2㎞の深江みずなし本陣エイドあたりで眠気、疲労ががMAXになり、リタイヤが頭をよぎります。それでも携帯電話でサライの音楽を流しながら必死で脚を前に進めました。気づけば島原城のエイドに6時前に到着。夜が明け始め、少し明るくなってきています。ゴールまで行けるかもしれないと確信したのはこの辺りからでした。

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↑3日目のメイン左の眉山と右の普賢岳。壮大な噴火の跡を肌で感じながらコースを進みます。

3日目島原ステージ。230㎞を超えました。コース終盤の左に眉山、右の奥に普賢岳。午前7時30頃でかなり明るくなってきました。どちらも険しい登りですが、立ち止まることなく突き進み、登りは歩き、下りは一気に駆け下りました。このあたりからP部門(103㎞)のトップ選手に抜かれ始めます。

そして深江運動場から雲仙地獄まで標高800mの登り坂です。もう写真を撮る余裕もありません。ひたすら歩き続け、雲仙地獄までたどり着いたときはへとへとでした。しかも雲仙地獄のチェックポイントは足場の悪い地獄周辺を歩き回ります。後半に残していた脚を一気に使った監事でした。しかし、下りにはいると不思議と止まらずに走れます。ついに完走できるという気分の高揚なのか、脚に余裕が残っていたのか分かりませんが小浜までの下り区間はかなりのスピードだったと思います。

そして、11月5日の13時37分、ほとんど立ち止まることなく3日目も進み続け、ついにゴールへと帰ってくることができました。

脚と内臓を守るためにとった作戦でしたが、結果的に全身の体力が維持できて、そのおかげで終盤の眠気も少なくなったのだと思います。

結果

11月5日13時37分ごろゴール

タイムは54時間37分23秒でした。

なんと、W部門でトップゴールしました。

(実際は時間差スタートがあるので順位は7位でしたが、1番最初にゴールへ辿り着きました)

↓主要ポイントと通過時間です。

距離(㎞)通過時間距離(㎞)通過時間
スタート07:00小浜リスタート 19:50
あぐりの丘25.310:21津波見186.9 
女神大橋4512:56口之津194.423:15
権現山公園7017:06原城駐車上203.31:05
樺島灯台80.719:12堂崎214.52:52
樺島公民館復路83.819:46ふかえ本陣224.24:31
自転車道入口 22:10島原城240.85:53
川原98.523:07平成新山2397:36
茂木ぶらぶら115.41:53深江運動場247.2 
日見公園1307:04俵石展望所252.89:53
飯盛とんの山138.88:38雲仙温泉260.311:22
飯盛経塚1469:50小浜木場269.712:45
千々石海岸162.312:26小浜ゴール27613:37:23
小浜中継所173.314:10【所要時間】 54:37:23

W部門は81名が参加し、完走したのは34名。完走率は41%です。

そして、完走者の中で私は2番目に若い選手でした。どれだけ鉄人ばっかりなんだと、改めて驚いた大会でした。

感想

ゴールできて、本当にうれしいです。初めて橘湾岸スーパーマラニックに参加して15年ぐらい経つと思います。

ゴール直後はわりと元気でしたが、自宅に帰ったあとは晩ご飯も食べずに寝てしまいました。レースを振り返って一番きつかったのは2日目の160㎞前後の千々石海岸の長い直線の照り返し、そして3日目の224㎞付近の水なし本陣での眠気でした。3日間スムーズに進んできたつもりでしたが、くじけそうな場面が何度かあり、リタイヤは紙一重の状態だったと感じました。

1ヶ月以上経って、この記事を書いていますが、振り返るとこの凝縮された3日間が鮮明に蘇り、そのたびに興奮します。しばらく超ウルトラはでなくていいかと思っていますが、またきっと出るんだろうな。

最後に1日目に色々なアドバイスをいただいたベテランランナーさん。この方もゴールしていたのを後でHPで知りました。お礼が言えてないので、またいつかお会いして感謝の言葉を伝えたいです。

↑2日目の160㎞前後の千々石海岸の長い直線で日差しの照り返しでダウン寸前の私

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